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2013年5月18日 (土)

居着きから自由へ

 合気道稽古で新人の女性と組んで、片手取を行う。対面した私が彼女の手首を掴んだ状態で、彼女がカラダを転換し、私と横並びになるという訓練である。どうしても、最初の手首を掴まれた状態で固まってしまい、初心者では特に難しい難関だ。

 偶然にも昨日はインターネットで「炭粉良三の合気閑話 その十三」を拝読し、ちょうど手首を掴まれた場合の例があり、大変参考になった。

 相手に手首を掴まれた場合、手首をなんとか動かそうとした結果、それを動かす筋肉である上腕二頭筋等を最大限に収縮させることになる。しかし、掴まれた手首がどうしても動かないとなると、無意識下で諦めてしまうことになってしまう。

 彼女は一生懸命に、掴まれた手首を自由にしようと、上腕二頭筋を最大限動員したが、まったく動かず、諦めの境地に入っていった。そういう場合は、力を抜いてとか、手首に意識を集中しないでとか、相手の気の方向に合わせてとかの打開策が色々とあるのだが、なかなかイメージして、実践できないものだ。特に、基本中の基本である「肩の力を抜きなさい」といっても、つい力んでしまうのが人間である。

 そういう場合は、掴まれた右手首を自分の左手でそっと触れながら上に引張るようにアドバイスすると、大抵はスムーズに右手を動かすことができる。しかし、いつまでも左手を添えている訳にはいかないので、どうしたら右手を自由に動かせるのか。

 そこで合気閑話からのヒントを得たので、手首を動かすのに必要な上腕筋肉を使わず、むしろ捨ててしまいなさいとアドバイスをした。そして、左手を添えたときの感覚を思いだして、それをなぞるようにイメージして、動かしてみたらどうかと付け加えた。すると、スムーズに動くことができた。その後、カラダの硬い人とも組んで、同じように試みたが、格段に動きがよくなった。

 絶対に力んではいけないとわかっていても、それを実践することの困難さは、多くの武道修行者の共通課題であろう。

 私たちがカラダを動かすためには、通常の脳から筋肉群に対する指示の流れという一連の身体運用システムが出来上がっている。コーヒーカップを掴み口元に運ぶ、ドアノブを押す、荷物を運ぶといった動作を司る身体運用システムがあるからこそ、私たちが筋肉を動かして日常生活を営むことを可能にしている。

 しかし、相手に掴まれたり、投げ飛ばしたりする場面に遭遇した時には(社会生活ではまずあり得ない場面だが)、通常の身体運用でカラダを使おうとしている限り、ただ筋肉を力ませる結果に陥って、相手の筋力と拮抗し、ガチガチな硬い動きになってしまう。

 先日の柔術稽古では、立っている相手の道着の襟首を引張って倒す動作を行なった。力を入れて引張っても、同体格の相手は簡単には崩れない。しかし、相手の一部分(ホクロとか、道着のほころび等)に関心を持って意識を集中させながら、襟首を下におろすと、簡単に崩すことができた。それからはゾーンに入ってしまい、簡単に何度も何度も相手を崩し、倒すことを繰り返せた。

 その件で連想したのが、宇城憲治氏の本に書いてあった実験で、自分の左手の甲を相手に思い切り押させながら、持ち上げることは困難だが、右手で箸をもって自分の口に運ぶ動作をしながら、左手を上げると簡単に上がってしまうことだ。

 まさに、ある局所(手首、襟首、左手甲など)を意識して、通常の身体運用で相手を動かそうとすると、変に力んでしまい動かせないが、局所をなんとかしようとする意識を捨て、離れることによって自由を得るのであろう。

 それは、5キロの鉄プレートを抱えた状態と、5キロの幼子を抱いた状態との身体感覚の違いにもつながるのかもしれない。ブレートの場合は、ブレート自体の重さに意識が重なり、圧迫感や負担があるが、幼子の場合は体重よりも、可愛さや愛情に意識が向かい、身体の自由度はプレートの比ではない。

 武道は、普段の生活で使っている身体運用とは、別次元のものであると、今回改めて学んだのだ。奥は深い.............

意識と筋肉の異常収縮(=筋力を使用するという事)
無意識と筋肉の正常収縮(=ただ動くという事)
その両者による、相手の「印象」の違いにこそ、合気の糸口がある。
そして、遂にはそのもっと以前の境地へ……
                       
                    合気閑話 その十三 より

 

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